柴犬が家族になってから、リビングの空気が変わった話

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うちに柴犬が来たのは去年の11月だった。

名前は「むぎ」って言うんだけど、これが本当に、家の中の空気を変えてしまったんだよね。別に大げさな話じゃなくて、文字通り「空気」が変わった。朝起きて階段を降りると、リビングにはもう犬の匂いがうっすらと漂っていて、ソファの上には茶色い毛がちらほら落ちている。それまでは無機質だった空間に、生き物の気配が満ちるようになったというか。

むぎは典型的な柴犬で、ツンデレというよりほぼツンなんだけど、たまに見せる甘えがずるい。夕方、仕事から帰ってくると玄関でしっぽを振って出迎えてくれるんだけど、撫でようとすると「いや、別にあんたのためじゃないし」みたいな顔でそっぽ向く。でも5分後にはこっちの足元にぴったりくっついて寝てる。この距離感がたまらなくて、家族全員がむぎに振り回されてる。

母親なんて特にひどくて、むぎが来る前は「犬なんて面倒くさいだけ」って言ってたくせに、今じゃ毎朝むぎの写真を撮ってはスマホの待ち受けにしてる。リビングのテーブルには「わんこのおやつ手帖」っていう謎のノートまで登場して、どのおやつをいつあげたか記録してるらしい。ちなみにそのノートの表紙、なぜか柴犬じゃなくてゴールデンレトリバーのイラストなんだけど、誰も突っ込まない。

父親は父親で、休日の朝にむぎと一緒にリビングでゴロゴロしてる。新聞読みながら、むぎの頭を無意識に撫でてて、むぎもまんざらでもなさそうにしてる。前は休日でも朝早く起きて庭いじりしてたのに、今は「むぎが起きるまで」って言い訳して二度寝してる。完全にむぎ中心の生活リズムになってしまった。

そういえば、前に飼ってたハムスターのことを思い出した。小学生の頃なんだけど、あれも可愛かったなあ。名前は「チョコ」で、夜中に回し車をカラカラ回す音で目が覚めたりして…って、全然関係ない話だけど。

むぎが来てから、家族の会話も増えた気がする。夕飯のとき、以前は各自スマホいじってたりテレビ見てたりで会話が少なかったんだけど、今は「今日むぎがこんなことした」「散歩で誰々さんに会った」みたいな報告大会になってる。妹なんて、むぎのInstagramアカウントまで作って、フォロワー集めに必死になってる。「むぎの日常」とかいうアカウント名で、フォロワーは今200人くらいらしい。

冬の寒い日、むぎはストーブの前を陣取る。家族が「ちょっとどいて」って言っても絶対動かなくて、結局人間のほうが場所を譲ることになる。リビングの一番暖かい場所は常にむぎのもので、私たちはその周辺で寒さに耐えてる。でもそれが妙に心地よくて、むぎの寝息を聞きながらみんなでテレビを見たり本を読んだりする時間が、なんだか特別なものになった。

週末の午後、家族全員がリビングに集まってることが増えた。別に何をするわけでもないんだけど、むぎがいるとなんとなくそこにいたくなる。むぎを中心に、みんながゆるく繋がってる感じ。父親はソファで新聞、母親は編み物、妹はスマホ、私は本。それぞれバラバラなことをしてるんだけど、同じ空間にいる。むぎはその真ん中で、気持ちよさそうに寝てる。

たぶん、これが「家族と過ごす」ってことなんだろうな、って最近思う。

特別なイベントがあるわけでもなく、深い話をするわけでもなく、ただ同じ空間に一緒にいる。むぎが来る前は、家族それぞれが自分の部屋にこもりがちだったけど、今はリビングに自然と足が向く。むぎという小さな存在が、家族を物理的に近づけてくれた。

むぎは相変わらずツンとしてて、呼んでもこっちを見るだけで近寄ってこないことも多い。でもそれでいいんだと思う。無理に懐こうとしなくても、同じ空間にいるだけで十分。家の中に、生き物の温度がある。それだけで、なんだか家が家らしくなった気がする。

来月でむぎが来てちょうど1年になる。この1年で、うちのリビングは確実に変わった。もう、むぎのいない生活なんて考えられない…けど。

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