柴犬を飼うって、想像の三倍は大変だった話

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柴犬を飼い始めて三年目の春、ようやく「ああ、これが普通なんだ」って思えるようになった。

最初に言っておくと、柴犬ってめちゃくちゃ可愛い。SNSで見るあのくるんとした尻尾、つぶらな瞳、ふわふわの毛並み。全部本物。でもね、可愛いだけじゃ絶対に飼えないって、今なら断言できる。うちの柴犬は名前を「むぎ」って言うんだけど、この子が家に来た日のことは今でも鮮明に覚えてる。生後二ヶ月の小さな体で、キャリーケースの中からこっちをじっと見つめてきて、もう心臓が爆発するかと思った。

で、その日の夜。むぎは一晩中鳴き続けた。

「子犬は最初の数日は夜鳴きするかもしれません」ってペットショップの人に言われてたけど、想像の十倍くらいの音量だった。クゥーン、クゥーンって、まるで世界の終わりみたいな声で。近所迷惑が怖くて、結局私はむぎのケージの横で寝袋で寝ることになった。夜中の三時、薄暗い部屋でむぎの鳴き声を聞きながら「これ、本当に飼えるのかな」って不安になったのを覚えてる。あの時の部屋の匂い、新しいペットシーツと子犬特有の甘い匂いが混ざった感じ、今でも思い出せる。

柴犬の飼育で一番驚いたのは、その頑固さ。「柴犬は日本犬だから従順」なんて大嘘。むぎは散歩中、気に入らない方向に行こうとすると完全に動かなくなる。リードを引っ張っても、おやつで釣っても、ピクリともしない。真夏のアスファルトの上で、じっと座り込んで私を見上げてくる。あの「どうするの?」って顔。近所の人に笑われながら、十五分くらい路上で待ったこともある。

そういえば、去年の秋に友達が遊びに来た時、「柴犬ってこんなに吠えるの?」って驚いてた。

実は柴犬、警戒心がめちゃくちゃ強い。玄関のチャイムが鳴るたびに全力で吠える。宅配便の人、近所の人、風で揺れる植木鉢、全部が敵。最初の一年は本当に大変だった。しつけ教室にも通った。「ドッグトレーニングスクール・ハーモニー」っていう、家から車で三十分くらいのところ。毎週土曜の朝、むぎを連れて通ったけど、トレーナーさんに「柴犬は…根気が必要ですね」って苦笑いされた時は、ちょっと泣きそうになった。

抜け毛の量も想像を超えてた。特に換毛期。春と秋、年に二回訪れる地獄の季節。掃除機をかけても、かけても、床に柴犬色の毛が舞ってる。黒い服なんて着れない。会社に着いていくと、同僚に「また犬連れてきたの?」って言われる。それくらい服に毛がつく。コロコロは一週間で一巻使い切る。最初の換毛期の時、あまりの抜け毛の量に「この子、病気なのかな」って本気で心配して動物病院に電話したら、「柴犬ならそれが普通です」って笑われた…だけど。

食事の管理も神経使う。柴犬は食物アレルギーが出やすいらしくて、むぎも一歳の時に皮膚が赤くなって病院通いした。結局、鶏肉がダメだって分かるまで二ヶ月かかった。ドッグフードを変えるたびに、むぎの様子を観察して、うんちの状態をチェックして、毛並みを確認して。犬を飼う前は、そんなこと考えたこともなかった。

でもね、夏の夕方、散歩から帰ってきてむぎに水をあげる時。がぶがぶ飲んで、満足そうに私を見上げてくる瞬間。あの顔を見ると、全部許せちゃうんだよね。不思議と。早朝五時半、眠い目をこすりながら散歩に出る日々。雨の日も、風の日も、二日酔いの朝も。柴犬を飼うってそういうこと。

運動量も半端ない。一日二回、各三十分以上の散歩は必須。サボると家の中で大暴れする。クッションは噛みちぎられるし、ティッシュは部屋中に散らばるし、もう戦場。若い頃のむぎは、散歩だけじゃ足りなくて、休日はドッグランに連れて行ってた。そこで他の柴犬の飼い主さんと話すと、みんな同じような苦労してて、なんか安心した。「うちの子も頑固で…」「うちもです!」みたいな。

医療費のことも言っておかないと。予防接種、フィラリア予防、ノミダニ予防、年に一回の健康診断。これだけで年間五万円は軽く超える。むぎが誤飲した時は、夜間救急で三万円飛んだ。犬を飼うってお金もかかる。

最近、むぎは少し落ち着いてきた気がする。三歳になって、散歩中も前ほど引っ張らなくなったし、来客にも少しだけ慣れた。でも相変わらず頑固だし、抜け毛もすごいし、毎朝早起きは続いてる。

それでも、もう一度選べるとしても、きっと柴犬を選ぶと思う。たぶんね。

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