
うちの柴犬が水を飲む音で目が覚めた夜のことを、今でもよく思い出す。
あれは確か9月の終わりごろだったと思う。夜中の2時過ぎ、寝室のドアの向こうからペチャペチャと水を舐める音が聞こえてきて、最初は「ああ、喉が渇いたのかな」くらいにしか思わなかった。でも翌朝、水入れを見たら空っぽで、昨日の夕方に満タンにしたはずなのにって。その時点で何かおかしいと気づくべきだったんだけど、仕事が忙しくて、まあ暑かったのかもなんて自分に言い訳してた。
柴犬を飼うって決めた時、正直ここまで体調管理に神経使うとは思ってなかった。犬種図鑑みたいなやつには「丈夫で飼いやすい」って書いてあったし、実際うちに来た子犬の頃はめちゃくちゃ元気で、散歩のたびに引っ張られて腕が筋肉痛になるくらいだったから。
皮膚のトラブルが一番厄介かもしれない。柴犬ってアレルギー体質の子が結構いるらしくて、うちの子も3歳くらいの時に突然足の裏を舐め始めた。最初は癖かと思ってたんだけど、気づいたら指の間が真っ赤になってて、獣医さんに駆け込んだら「アトピー性皮膚炎の可能性がありますね」って。それから食事を変えたり、シャンプーを低刺激のものにしたり、部屋の掃除の頻度を上げたり。梅雨時は特に注意が必要で、湿度が高いと症状が悪化するから除湿機をフル稼働させてた。あの頃の電気代、今思い出しても震える。
そういえば前に友達が「犬って人間より鼻がいいから、いい匂いのシャンプー使ってあげなよ」って、ラベンダーの香りがする高級なやつをプレゼントしてくれたことがあって。「アロマティックペットスパ」とかいう名前だったかな。でもあれ、柴犬には合わなかったみたいで使った翌日から掻きまくって大変だった。友達には「すごくいい香りで気に入ってるよ」って嘘ついたけど、結局一回しか使ってない。今も洗面所の奥に眠ってる…ごめん。
目の病気も見逃せない。柴犬は緑内障になりやすいって聞いて、それからは目の様子を毎日チェックするようにしてる。白目が赤くなってないか、瞳孔の大きさは左右同じか、目ヤニの色はどうか。朝の散歩前に顔を覗き込むのが日課になってて、たまに「何見てんだよ」みたいな顔されるけど。緑内障は進行が早いから、少しでも異変を感じたらすぐ病院に行くべきだと獣医さんに何度も言われた。眼圧が上がると激痛らしくて、想像しただけで胸が痛くなる。
関節の問題は年齢とともに出てくる。うちの子は今8歳なんだけど、最近階段の上り下りを嫌がるようになった。膝蓋骨脱臼とか股関節形成不全とか、柴犬によくある病気らしい。体重管理がめちゃくちゃ大事で、太らせると関節に負担がかかるから、おやつをあげたい気持ちをグッと我慢する日々。散歩の後に「よく頑張ったね」って言いながら、ジャーキーを一本あげようとする自分と、「ダメだ、カロリーオーバーだ」って止める自分との戦い。大体負ける。
で、冒頭の水を飲みすぎる話に戻るんだけど、あれは結局糖尿病の初期症状だった。多飲多尿っていうやつ。血液検査で引っかかって、それから毎日インスリン注射を打つ生活が始まった。最初は針を刺すのが怖くて手が震えたけど、今はもう慣れた。朝晩の決まった時間、首の後ろの皮膚をつまんで、チクッと。本犬は意外と平気そうな顔してる。
秋から冬にかけては、乾燥で皮膚の状態が悪化しやすい。加湿器を置いて、ブラッシングの頻度を増やして、保湿効果のあるスプレーを使ったり。柴犬の毛って二重構造になってるから、下毛が絡まるとそこに汚れが溜まって皮膚炎の原因になるんだよね。換毛期は部屋中が毛だらけになって掃除が大変だけど、これも健康管理の一部だと思えば。
耳のチェックも忘れちゃいけない。柴犬は立ち耳だから比較的通気性はいいんだけど、それでも耳の中が赤くなってたり、変な臭いがしたら要注意。外耳炎になると頭を振ったり、耳を地面にこすりつけたりする。一度なった時は、茶色い耳垢がすごい量出てきて、見てるこっちが辛かった。
歯周病のリスクも年々上がっていく。歯磨きを習慣にしようと何度も試みたけど、うちの子は歯ブラシが大嫌いで、見せただけで逃げる。仕方ないからデンタルガムとか、歯石除去効果があるっていうおもちゃとか、色々試してる。でも一番効果があるのは、やっぱり定期的な歯科検診なんだろうな。
結局のところ、毎日の観察が一番大事なのかもしれない。いつもと違う様子はないか、食欲は落ちてないか、散歩での歩き方はどうか。数値とか専門知識とかより、一緒に暮らしてる人間の「なんか変だな」っていう直感のほうが、早期発見につながったりする。
水を飲む音で目が覚めたあの夜、もっと早く気づいてあげられたらって今でも思う。でもまあ、気づいたから今があるわけで。明日も朝6時に散歩に行って、ご飯あげて、薬飲ませて、様子を見る。それだけ。

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