柴犬が公園で遊ぶ姿に、元気をもらった午後の話

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近所の公園で柴犬を見かけたのは、確か先週の木曜日だった。

仕事で少し嫌なことがあって、なんとなく帰り道を遠回りしていたんだけど、公園の脇を通りかかったときに聞こえてきたのが、犬の鳴き声と飼い主さんの笑い声だった。何気なく視線を向けると、茶色い柴犬が全力でボールを追いかけていて、その姿があまりにも無邪気で、思わず足を止めてしまった。尻尾をぴんと立てて、耳を後ろにぴたっと倒して、もう全身で「楽しい!」って叫んでいるような走り方。あれを見て元気が出ない人間っているんだろうか。

柴犬ってさ、なんであんなに全力なんだろうね。

ボールを咥えて戻ってくるときも、途中で急に方向転換して草むらに突っ込んだり、何もないところでジャンプしたり、とにかく動きが予測不能だった。飼い主さんは慣れた様子で「こら、戻っておいで〜」って声をかけているんだけど、柴犬の方はまったく聞いていない。いや、聞こえてはいるんだろうけど、今はそれどころじゃないって顔をしている。あの「聞こえてるけど無視」の表情、柴犬特有だと思う。ちょっと人間っぽいというか、自分の意志がはっきりしているというか。

ベンチに座って、しばらくその様子を眺めていた。春先の夕方で、風がまだ少し冷たくて、でも日差しは暖かくて、公園の木々が風に揺れるたびにさわさわと音を立てていた。

そういえば、昔実家で犬を飼っていたことを思い出した。柴犬じゃなくて雑種だったんだけど、やっぱり散歩のときは全力で、リードを引っ張られて何度も転びそうになった記憶がある。あの頃は「もっと落ち着いて歩いてくれよ」って思っていたけど、今考えると、あれが犬にとっての全力の喜びだったんだろうな。人間みたいに「ちょっと疲れたから休憩しよう」とか「明日もあるし今日はこのくらいで」とか、そういう計算をしない。目の前にある楽しさに、ただ全力で飛び込んでいく。

公園の柴犬は、飼い主さんが投げたボールを何度も何度も追いかけていた。10回目くらいになると、さすがに息が上がってきたのか、ボールを咥えて戻ってくるスピードが少しだけ落ちた…だけど。それでも尻尾は振り続けていて、「もう一回!」って顔をしている。飼い主さんが「最後ね」って言ってボールを投げると、また全速力で走り出した。あの瞬間の加速、本当にすごい。

犬用のおもちゃって、最近すごく種類が増えたよね。この前ペットショップに寄ったら、「ドッグジョイ」っていうブランドのおもちゃコーナーがあって、ボールだけでも20種類くらいあった。光るやつとか、音が鳴るやつとか、匂いがついているやつとか。でも結局、犬にとっては何でもいいんだろうなって思う。大事なのは、それを投げてくれる人がいて、追いかけられる場所があって、全力で走れるっていうこと。

ベンチから立ち上がろうとしたとき、柴犬がこっちに気づいた。

じっとこちらを見つめてきて、首を少し傾げた。何か用? みたいな顔。飼い主さんが「すみません、人懐っこくて」って声をかけてくれたから、「いえいえ、可愛いですね」って返した。柴犬は私の返事なんて待たずに、また次のボールを追いかけ始めた。そうだよね、君は忙しいもんね。

公園を出て、また帰り道を歩き始めた。さっきまで感じていた仕事のモヤモヤが、不思議と軽くなっていた。別に何か解決したわけじゃない。明日も同じ問題は残っているし、嫌なことは嫌なままだ。ただ、あの柴犬の全力で遊ぶ姿を見ていたら、「まあ、いっか」って思えた。人間はどうしても先のことを考えすぎてしまうけど、たまには目の前のことに全力になってもいいのかもしれない。

家に着いて、冷蔵庫を開けて、ビールを一本取り出した。今日はもう、何も考えない。明日のことは明日考えればいい。窓の外を見ると、公園の木々が夕暮れの光の中で揺れていた。あの柴犬、今頃家でぐっすり寝ているんだろうな。

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