柴犬が公園で暴れる姿を見て、私は何も考えられなくなった

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近所の公園に柴犬がいた。

その日は確か火曜日の午後3時過ぎで、私は在宅勤務のリモート会議が早めに終わって、なんとなく散歩に出たんだけど。公園のフェンス越しに見えた茶色い塊が、もう尋常じゃない速さで走り回っていて、最初は何かの動物が迷い込んだのかと思った。近づいてみたら柴犬だった。それも、たぶん2歳くらいの若い個体で、飼い主のおじさんが投げたボールを追いかけては戻り、また追いかけては急ブレーキをかけて方向転換する、みたいな動きを延々と繰り返している。

あの独特の走り方、知ってる人いるかな。柴犬って走るとき、なんていうか後ろ足がバネみたいになって、地面を蹴る瞬間に全身がちょっと浮くんだよね。で、着地すると同時に次の一歩がもう始まってる感じ。その日の柴犬もまさにそれで、芝生の上を弾丸みたいに駆け抜けていく様子は、見ているだけでこっちの心拍数が上がるような迫力があった。耳がぴょこぴょこ跳ねて、口を開けて舌を出して、目がキラキラしていて。ああいう「全力で生きてる」って感じの表情を人間がしたら、たぶん怖いんだけど、犬だと最高にかわいい。

途中で別の犬が近づいてきた。たぶんゴールデンレトリバーだったと思う。体格差が倍以上あるのに、柴犬のほうが完全に主導権を握っていて、大型犬を振り回すように走り回らせていた。ゴールデンが「ちょっと待って…」みたいな顔で追いかけてるのに、柴犬は容赦なく急旋回して逆方向に走り出す。その繰り返し。飼い主同士が「すみません、うちの子元気すぎて…」「いえいえ、こちらこそ」みたいな会話をしている横で、当の本人たちは完全に自分の世界に入っていた。

そういえば昔、実家で犬を飼おうって話になったことがあって。私は柴犬がいいって言ったんだけど、母親が「柴犬は頑固だからダメ」って却下したんだよね。結局何も飼わなかったんだけど、今思えばあれは母の正しい判断だったかもしれない。うちの家族、誰一人として犬の散歩を毎日続けられる根気がなかったから。

公園の柴犬は、ボール遊びに飽きたのか、今度は地面の匂いを嗅ぎ始めた。さっきまでの爆発的なエネルギーはどこへやら、鼻を地面にぴったりくっつけて、まるで何か重要な手がかりを探しているみたいにゆっくり歩いている。で、何かを見つけたのか、急に穴を掘り始めた。前足で土を掻き出す動作が、もう機械みたいに正確で速い。飼い主のおじさんが「こら、やめなさい」って声をかけても完全無視。3秒後にはまた別の場所に移動して、また掘り始める。

あの集中力の切り替わり方、人間にはない感じがする。私たちって、何かに夢中になってる最中に別のことを始めるとき、必ず一瞬の「間」があるじゃん。でも犬にはそれがない。遊びから匂い嗅ぎへ、匂い嗅ぎから穴掘りへ、穴掘りから再びボール遊びへ。すべてが瞬間的に切り替わって、しかもそのたびに全力投球。見ているだけで疲れるけど、同時になんだか羨ましくもなる。

気づいたら30分くらい経っていた。日差しが少し傾いて、公園の木々が長い影を落とし始めている。柴犬はまだ走っていたけど、さすがに最初ほどのスピードは出ていなくて、ときどき立ち止まって水を飲んでいた。飼い主のおじさんがリードを持って「帰るよ」って声をかけると、柴犬は最後にもう一周だけ全力疾走してから、素直におじさんのところに戻っていった。その「名残惜しいけど仕方ない」みたいな後ろ姿が、妙に人間くさくて笑えた。

あれから私も家に帰ったんだけど、パソコンの前に座っても、なんだか仕事に集中できなくて。頭の中で柴犬が走り回っている映像がリピートされ続けていた。別に何か深い意味があるわけじゃないんだけど…ただ、あの全力で遊ぶ姿を見たら、自分の日常がやけに色あせて見えたというか。

明日も公園に行ってみようかな、とは思ってる。

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